ブラインドサッカーてすごい世界だなあ~。
はじめは何の気なしにテレビでブラインドサッカーを観てた。日本vsフランス。ブラインドサッカーといえば「なんだかわちゃわちゃやってんな」という印象しかなかったので、今までとくに注目もしてなかったのだけど、なんとなーく観てたらものの数分で魅了されてしまった。
フットサルぐらいの広さのコートかな?ゴールネットと左右サイドに壁がある。目が見えない視覚障害の選手の他に、目が見えるゴールキーパーが1人づつ。視覚障害にも個人差があるだろうから選手はアイマスクをしてる。視界は真っ暗でゼロ視界。
見えない代わりに耳で補う。声やサッカーボールの中に入ってる鈴の音を聞き取る。よってピッチ上はにぎやかだ。今大会はまだ無観客だから有観客時よりはマシなのカモしれないけど、ソレでもピッチにいる味方の選手の声を聞き分けないといけない。審判の声やピッチの外にいる監督やコーチやガイドといった人の声。その様々な音が飛び交う中で、転がるボールの鈴の音を聞き取らなければならない。その鈴の音を瞬時に聞き取って、瞬時に反応し走り出さなければならない。
カラダに触れるコトも大事だ。選手たちは絶えず手を伸ばして相手や味方のカラダに触れている。ようは触覚だ。サッカーではたぶん原則許されてはいないだろうけど、ブラインドサッカーでは問題ないよう。でも程度はあるだろう。あまりに故意な接触、危険な行為はファールを取られる。相手に危険を報せる意味もあるカモしれないけど、自分の身を守る意味もある。自分の存在を報せるワケだ。
盛んに声を掛け合って、カラダに触れて。なんとなくいわゆる普通のサッカーのような緊迫感が強くなく、むしろ温かい感じがするのは気のせいだろうか。ハタから観てると平和な感じすらする。
ゴールキーパー(目が見える)はボールの鈴の音がするように、ボールを壁に投げたり地面にバウンドするように投げたりゴロのように転がしたりしてる。いわゆる普通のサッカーのように思い切り蹴ったりしない。ソレだと鈴の音がしないからだ。この動作1つとっても「ブラインドサッカー脳」とでもいうべき思考回路になってないといけない。「常に音がするように」という一工夫が必要のようだ。
だから音がしない状態、止まってるボールを蹴るほうがムズかしいようだ。止まってるボールを蹴ろうとして思いっきり空振って転んだりしてる。たけし氏がボケでやりそうなコトを真面目な顔でやってる。むしろ転がってるボールのほうが蹴りやすそう。
鈴の音に反応してボールに向かってダッシュしても選手同士当たらない。お互い声を掛け合ってたりしてるのカモしれないが、ふつーに「よく人同士当たらねぇよなー」と感心する。壁際のボールの奪い合いでモミクチャになっても脚同士を蹴りあってる感じでもない。相手の選手の足に、ときに味方同士で躓いて転ぶ。声が間に合わなかったり不可抗力も当然あるだろうけど、なんとなく微笑ましい場面もある。でもハタから観てるからそう見えるだけで、当の本人たちは傷だらけなんじゃないかと思う。故意に相手を傷つけるコトもできそうだけど、カラダをぶつけ合うというコトは諸刃の剣で自分も傷つく可能性がある。戦闘不能になってもつまらないから、そういうお互い致命傷になるコトはしないのだろう。
圧巻だったのは、前半終盤日本が3点目を決めた場面。日本がゴールのチャンスでフリーキックを蹴る前、ガイドの人が相手ゴールの枠を2~3度カンカン叩いただけで(もちろんキーパーの耳にも背中越しにその音は聞こえてるはず)、相手選手を避けながら、もちろん立ちはだかるキーパーに取られないようにして、カンカン音がしたトコロに正確にゴールキックをした場面だ。寸分狂わないドンピシャ。コレ目が見えててもムズかしいのに、よく真っ直ぐに蹴れるよなあ、と。
瞬時に判断するコトが多く、見た目より神経使いそうで体力消耗しそうだ。気配を読み取るてコトもしてるんだろうけど、ソレよりとにかく音が大事なんだろうな。耳が超人的。そして目が見えないけど走り出したり飛び込んだりする勇気。コレて健常者なら恐怖だと思うんだよ。身体が拒否反応起こすんじゃないかと思う。ソコを越えてきてるんだよな。人てココまで自分の能力を高めるコトができるんだなあ、と。逆に言えば、ワタクシ含む健常者は普段いかに視覚とかその他自分の能力に頼りきってるか、依存してるかてコトだよなあ。