過去があるから今がある。石(意思)が積み重なってココにいる。
ムダなコトは1つもない。未来とは「今」の連続である。

へたな鉄砲数打ちゃ当たる。へたでも打たなきゃ当たらない!をモットーとする
かたことの極私的「雑誌系」サイトです。(since 2004 Feb.)

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 やぎ本。⇒本が大好物なやぎのぢぇーむすくん(a.k.aかたこと)がオーガナイザーを務めるやぎの本棚、略して「やぎ本」。本や本にまつわる情報の紹介。神出鬼没でごくまれに登板します。
 ◇最新本◇  今年(といっても2021年だけど、、)読んだ本。後編 

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 Everyday39(エブリデイ・サンキュー)⇒katakoto cafe、やぎ本。につづくかたこと第3の架空のブランド。かたこと流に「毎日が楽しくなる」新たなアイデアを加えたグッズ関係のブランドです。
 ◇最新グッズ◇  『靴箱→ファイルボックスへトランスフォーム!』 

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 祝☆overcoat’s(オーバーコーツ)再結成記念!!  ワタクシが検索しやすくするため(笑)overcoat’sについて書いたブログをまとめて読めるようにしました。ブログタイトル下のカテゴリー「overcoat’s」をクリックしてね~☆
 ◇最新ブログタイトル◇   『Overcoat's(オーバーコーツ)21年ぶりの新アルバム!『9 numbers,Groovy!』を聴いて。♪♪その5♪♪』 

橘いずみ再考②。

20代の橘いずみというのはとにかく吠えてた。Tシャツにジーンズの少年姿の女の子。ワタクシは、彼女は歌を唄うテクニック自体は上手いと思ってはいない。誰だって感情が表に出れば、自分じゃ統制できない溢れてしまうパワーがあって当たり前だ。でも彼女の場合は感情を吐き出すという情動の部分と、ソレを音符に乗せて歌うという理性の部分、コレが危ういながらもなんとか安定してる、という歌い方。その微妙で誰にでもできうるコトではない稀有な才能が彼女の歌を「うまい」と言わせる。だがこの人は感情表現が上手いワケではない。不器用だから叫ぶしかないのだ。
叫んでは泣いて叫んでは泣いて。「20代」というのは真っ直ぐで真面目に何にでも相対したい、とそういう志向がある。自分に対しても、他人に対してもソレを求める。自分をなんとか認めたい。なんとか認めたいけど認められない。自分を認めるコトができないから他人を認められない。そんな自分を解ってもらいたい。でも解ってもらえるはずがない、、。彼女の歌はそんな意識層・無意識層からマグマのように湧きあがる言葉にならない叫び。血の咆哮。ブラウン管に映る彼女は異質な存在だった。雑誌に載る彼女の顔は笑わない。まわりは腫れ物にでも触るかのように。そしてまるで「一人チキンレース」をしてるような姿を遠巻きに見つめるしかない。ただソレは一人ではなく、自分とのレースなのである。
例えば自分の体調が悪かったり、風邪をひいて熱がでたりすれば、他人を気遣う余裕なんてない。自分のコトでいっぱいだ。他人のコトに気を向けるコトができるのは、自分がある程度大丈夫な状態だからだ。彼女の歌には「無償の愛」を取り上げた楽曲がいくつかある。その中の1つに『自分』という曲がある。自分を捨てたい、無償の愛という境地に達するには自分を捨てなきゃいけないのに、ソレがわかってどうしてできない?と自分に問うている歌。でもできない自分というのも良く解ってる、という非常に逆説的な歌。でもワタクシはこの歌に対して、最近はこんな風に考えてる。むしろ自分を大切にするべきでは?と。
無償、と言いながらその実は愛情を注ぐ相手の存在、相手が生き続けて欲しいと願う。相手の存在があるから自分の心が満たされるのだ。今思い出したが『太陽』にもそんな詞が出てくる。神に遣える牧師さんや仏に遣えるお坊さんは、神様や仏様のおかげで心が満たされているから、人に施しができるんだと思う。自分を大切にする、というコトは自分をごまかさず、隠さずにさらけ出して、ありのままの自分を受け入れて認めるコト。彼女は『自分』で自分をどうして捨てられない、と歌ったがソレはちいさな理屈やこだわりを持ったちっぽけな自分のコト。アルバム『十字架とコイン』を聴いたワタクシは、この方向でコレ以上の作品はムリだろ、と思うのと同時に「この人の未来は必ず明るくなる、報われるはずだ」と感じた。
アルバム『TOUGH』以降、所属会社を離れ、彼女のリリースはなくなったが精力的にライブをしていたらしく、この間で新たなる橘いずみの土台を一段一段丹念に積み上げていたのだと思う。同じ所属会社を離れた服部祐民子さんも契約が切れてから、とにかく歌うコトができなくて途方に暮れてた、と服部さん自身のサイトに記述している。たしかに現実的な話、我々だって急に働く場所がなくなれば途方に暮れるだろう。しかも自分は歌を唄うコトしかできない、、と思っていればなおさらだ。たぶん服部さんと同じような心境だったと推測されるが、ただその間に自分は歌しかないんだ、という静かで確かな意志をしっかりつかんだのだろう。
そして満を持してリリースされた、新生橘いずみ第一弾ミニアルバム『bellybutton』。bellybuttonとは「へそ」という意味である。1曲目の『HEAVEN』で「悲観主義には身体も疲れた」などトンネルを抜けた感のある歌詞を唄っている。いい加減であんまこだわらない自分。たしかにまだ全部が全部そーではないんだろうけど、そうなりたい希望も含めて橘いずみは言い放つ。音楽・唄うコトを自分の中心(=へそ)に据えて。彼女が新たに耕した自分という大地から、しっかり根を生やし芽吹いた瞬間である。