ヴィラデスト・カフェブック ¥1900(税別)
ヴィラデスト・カフェブック 玉村 豊男 関連商品 花摘む人 ヴィラデスト・ワイナリーができるまで パリのカフェをつくった人々 by G-Tools |
著者の玉村豊男氏はフランスやパリのカフェの造詣に大変深い作家(エッセイスト)で、フランス・パリのカフェ関連の著作もたくさん書かれています。そういった憧れにも似た造詣がヴィラデスト・カフェというものに結実しているんだと思います。
ヴィラデスト・カフェは信州の山の中にある実在するお店で、作家玉村氏の夢の集大成でもあります。玉村氏は夢実現のためにまず、自宅をその地に構え畑を耕しワイン作りを学んだり、カフェ開店への準備を整えていきます。そして念願だった自分のカフェ。自分の作った畑から採れた野菜。そして自分のつくったブドウから作った自家製ワイン。全てがこの地の土から作られこの地に還元されていく。
地産地消。もっとも分かり易いシンプルな循環システムですが、分かりやすくシンプルに言えることを成すことはとても困難なことでもあります。だから人々はそれを分かっていても、なかなか手をつけることができません。実際このヴィラデスト・カフェでもその地で採れたもの以外を使わないと不足分を補えません。それでもできるだけこのシンプルな循環を大事にしていきたいと考えています。
現在は本格グルメ志向により、各地の名産品や農作物を取り寄せたセレクトショップのようなレストランなどの出店が目立ちます。外国に目を向ければ例をあげると「スペインのイベリコ豚」など名ばかりが先行してしまう食材のブランド化。おいしければそれでいいではないか!というむきもありますし、わたくしもそれ自体否定はしません。しかしそういったものは各地から取り寄せる、という「力技」なため、同じような力を駆使すれば同じような食材を揃えることができ(それは個人レベルでも可能なことだし、逆に個人の方がよりいいものを手に入れることができる時代になった。それだけ差がなくなった、ということ)るわけです。そうなった時の店の優位性、というのは果たしてどこにあるのでしょう?「地産地消」というコンセプトは、そういったがっぷりよっつの膠着状態の、外にいるわけです。
あなたの事業が地域密着を目指すなら、この地産地消はかなり有力なコンセプトの1つだと思います。あなたの事業が拡大を目指すならこのコンセプトを取り入れるのは難しいかもしれません。その地で生活を営む人々にとっては、その地で採れたものの身近さに魅力があります。なので事業の規模は決して大きくはならないだろうと思います。しかしこのヴィラデスト・カフェの場合は、作家玉村豊男氏のネームバリューによって、その地以外からの来客を望むことができるのです。
わたくしは、玉村氏は自分の作った、信州のこの地で作った食材をこの地に住んでいる人以外にもできるだけ多くの人に食べてもらいたいんだろうな、と思います。おすすめであり紹介です。料理人というのは、畑で採れた野菜や食材をできるだけ良い形でお客さんにお届けする「手伝い」を担う、というのが本来の姿だと思います。その意識というのは、実際に畑を耕し丹精込めて野菜や果物を作るという工程を経ないと、なかなか実感として芽生えないものだと思われます。
自然物をどうこうしようというのではなく、雨風に吹かれるものを一所懸命に育てて、その丈夫に育った食材たちを、できるだけ余すことなく食べてもらう。文明というのは自然に対して無力なもので、人為というのは素材の持つ力を越えることはできません。ただ素材の持つ力を最大限に引き出す。全ての過程でのお手伝いをするだけ、なのです。