漫画マンガMANGA 其ノ二
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ところで土田世紀という漫画家の作品は、わたくしは『編集王』の時に初めて知ったのですが、『編集王』は週刊ビッグコミックスピリッツに連載されていた作品で、ちょうど連載されていた当時同じく連載されていた『月下の棋士』となんだか画風がそっくり、と思ったのです。今見ると違いますけどね。でもその頃はまだこういったリアルなタッチで描かれた漫画というのをあまり知らなかったので、好きだった『月下の棋士』のパクリ・ニセモノという認識で、土田世紀という漫画家をあまり好きではなかったです。人物の灰汁(あく)もあるし、どうもとっつきにくいという面もあります。
でも自分の中で「画力はある漫画家」という認識はあるわけです。この作品を読んでみようと思ったのは、VV(ヴィレッジヴァンガード)で大プッシュされているので気になってネットで調べてみたら、大絶賛の意見が圧倒的で話のあらすじを見てみて読んでみたくなったからです。
しかし主人公(だと思うんだけど)であるドンちゃんみたいな人というのは、この世にはやっぱりいないと思います。むしろ鉄矢みたいな人の方が多いことでしょう。いわゆるドラゴンヘッドのような「人は何か分からないものや状況に出くわすと正気ではいられなくなる」という、そちらの方が人らしいとさえ思います。でも、だからこそドンちゃんみたいな人を「いいなぁ」と思うわけです。ドンちゃんを「いいなぁ」と思わない人はどこか人として致命的な欠陥があると思われます。ドンちゃん・鉄矢・エミ、この3人は誰の心の中にも住んでいます。
でもわたくしはドンちゃんでさえ、決して純粋ピュア100%な人物ではないと思います。歪んでしまったのだと思います。歪んでしまったからああいう人格になったということなのでしょう。幼い頃に受けた傷、その傷を与えた人たちの憎しみの裏側にある淋しさ哀しさ、そこを人より敏感に察知してしまう自分。ドンちゃんはこういった人たちの「心の涙」が見えたのでしょう。自分がこういった人たちの心を救えたなら、人の心に傷を負わせるような人もいなくなるのでは、、という。ドンちゃんはそれを自分がこの世に生を受けた使命だと思い、だからこそ自分より他人、なわけです。ドンちゃんが描いた絵は「鉄矢とエミ」ですが実はイコール世界の人のこと、でもあると思います。この絵こそがドンちゃんの「永遠」のイメージなのです。
ラストの宮沢賢治『雨ニモマケズ』、涙がこぼれそうなのを必死でこらえました。自分を勘定に入れない男。まさにその通り。人は他人を想う気持ちがあるからこそ「人間」なのです。人は誰もが永遠への扉を開ける「鍵」を持っています。