過去があるから今がある。石(意思)が積み重なってココにいる。
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星を見る少年の物語。

キーチ 9 (9)
キーチ 9 (9)
新井 英樹

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ずっと書きたかったのだけど、ライブやらいろいろあってズレこんでしまいやしたがこの『キーチ!!』は、前に紹介した『ザ・ワールド・イズ・マイン』の作者と同じ作品で、時期的にはコレの方が後になるのか?でもかなり『ザ・ワールド〜』と似た感触を持つ作品であります。
読むとたしかに「キーチ、カッコいい!!」「最高!」と言う人はいるでしょう。女性も惚れると思いますね。こんな男らしい男はいないと。ワタクシも読んでて胸がすく気分になりました。
ワタクシの感想を申し上げるとキーチは江戸時代とか、そのくらい昔の男、「侍」(さむらい)という感じ。そのくらい時代をさかのぼってやっと違和感がないくらいの人物になると。そのくらい、言ってみれば古めかしい人物でありやす。
と最初はそう思ったけど、今の感想は「動物」て感じだな。動物。弱肉強食で自分の思いに忠実。弱き者を守るココロも本能的にあるけど、その「守り」に相手が甘えてくると途端に牙をむく、とそんな感じ。そういう男気・ワイルドさに好感が持てるのでしょう。
あとキーチは何より自分の気持ちに忠実なので、非常にシンプルです。普段我々がどっぷり浸かっている世間や常識はキーチにとって何も意味をなさない。キーチは9巻の時点で小学5年生。まわりの大人といえば、そんなキーチに世間というモノを言葉で教えようと試みるけど、キーチには柳に風、のれんに腕押し。ソレより世間よりもキーチが正しいとさえ、世間を説く大人は思ってしまう。「世間」は幻想で最大公約数で誰もの正解ではない。間違ってる。そんな思いがココロのどこかにあるから、言葉を並べながら同時に「自分の言ってるコトはおかしい」と思ってしまう。キーチはそんな大人たちの「鏡」になってる。何でも言うコトを反射してしまう。で、だんだん「キーチ正しい」の気持ちの方が強くなって「キーチ信者」になってくと。
1巻ではまだ「ちょっと他の子よりは暴れん坊」な範囲で収まっていたと言える。まだ「痛み」を知らない子供。しかし2巻でキーチの両親が死んでしまうんだけど、ソコでキーチ自身が何もできなかった無力感を味わうコトになり「痛み」を知るコトになる。両親を目の前で殺されながら、守れなかった無力感。人が死んでしまうというのは人の力じゃどうにもならないモノなんだ、と自分の力の無さを噛み締める。人は所詮ひとり。流れ流れてある女性のトコロに行くのだけど、その人も事故で重症を負い昏睡状態。また守れなかった。キーチは自分の信じるに足る出会った人たちから、ひとりで生きるコトの強度を得た。
そんなキーチだからこそ「金・暴力・権力・法律」「くだらない」と即答するんだよな。たぶんもうコレはカブせ気味に言い放ってるんだと思う。そんなモノをいくら持ってたって、死んだ人は生きかえらないだろう、、。無力感。淋しさ。切なさ。キーチを支配して沈殿してるこの思いを前提に読まないと、ただわぁーカッコいいやでキーチの言動や行動を理解できないと思う。
だからこそ佐治みさとを助けたりするワケなんですよ。キーチにとっては別に誰だって良かったんだと思う。ただ自分の目の前で弱ってる者がいて、本来なら弱肉強食だからイラついてしょうがないトコロを、守りたいという気持ちの方が勝ってしまった。あの時守れなかったという気持ちがあるから。その気持ちが佐治みさとに過剰なまでに入れこんで(いるように見える)守ろうとしてるワケで。
甲斐は甲斐でキーチに勝手に取り巻いてるだけで、まぁハッキリいって関係ない。たしかに話の展開を増幅してくれるから面白いは面白い。アレで5年生かよ?!(笑)て読んだら誰もが思うだろう。キーチは「世間と戦う」という構図になるのだけど、ある程度は世間というモノを知らないと、どうにもならないというコトもうすうす感じてるから、知恵を借りる上で甲斐と形の上では結託するようになる。ソコで佐治みさとの件を絡めて、コトはどんどん大きくなってくワケだけども、キーチの思いとはだんだん離れてくんだと思うね。結局は世間というモノに片足を突っ込んでる違和感を抱きながら。キーチにとっては甲斐の策略や膨張してく事態はさほど興味がない。「対世間」というのももともとは甲斐がキーチに吹きこんだモノだし、甲斐はその方向でシナリオを描いてくけど、キーチは「信じれる人がいればいい」というだけ。
キーチは愛が足りなかった。3才まで両親に囲まれて。たしかに大した親じゃないけど、愛にあふれた家庭でだった。親を失ったのと同時に自分も大きなモノを失ってしまった。キーチの信じるに足る女性。その人も今は眠りについたまま。その人に言われた「ひとりで生きるコトは楽しい。」をココロに決めたその「強がり」がキーチから涙を奪う。ソコを見ぬいたオバァ。キーチ!お前は自分の気持ちに素直じゃないじゃないか。泣きたい時悲しい時は泣きなさい。そして昏睡状態だった女性が目覚める。
ココまでが9巻で、この巻で少年編は終わり。目覚めちゃったんだなぁーと思ったね。ちょっとフクザツ。キーチもたぶんフクザツ。今まで昏睡状態で入院してたその費用をキーチが送るコトが、キーチの支えだったワケでしょ。そのコトでキーチを形成してる自我が保ててるワケ。でも、目覚めちゃったとなるとソコが無くなるから、キーチはどうなるんだろうと。でもまぁ嬉しいは嬉しいんだろうけど。
ただもうこの9巻から随分経つワケで、果して青年編みたいなのは再開されるのだろうか?分からないけど、あるとしたら今度はキーチは18才とか20才ぐらいだろね。そうなると法律がより絡んでくるワケですよ。今までは子供だからその辺がユルくて済んだと。でも「少年編終わり」で次が青年編だとするなら、よりその部分で描きにくくなるんじゃないかな?地下に潜ってくコトになるのかな。なんか甲斐たちとは離れてるような気がするんだけど。で、また再会するみたいな。でも「守る」て言ったから離れないのかな。まずは目覚めた女性が重要人物だけど。
どうやって話を収束させるのかなぁー?コレは「対世間」で描いてるから1つの結論を出すのってムリだと思うし、オマエはどっちだ?どうする?みたいな問いかけで終わるとか。『ザ・ワールド〜』みたいな地球ブっ壊しはもう通用しないしね。アレはアレでいいけどさ。ていうか『ザ・ワールド〜』にしろコレにしろ、もうコレで終わりでもいいとも思う。途中で言いたいコトが描けてれば、終わりなんてどーでもいいんじゃない?て。未完でもね。だから『ザ・ワールド〜』の終わり方が賛否両論分かれるらしいけど、あんな話、だれもが納得するようなキレイな結末なんかできっこないよ。その間のプロセスだけで充分だと思うけどな。言いたいコトのエッセンスはソコにあるんだから、結末なんてどうだって。