さらば、破壊王。
プロレスラーの橋本真也選手が亡くなった。死因は脳幹出血だという。肩の大手術を終え、復帰に向けリハビリを行ってるそんな矢先の訃報。
プロレスラーには純粋な人が多い。彼はプロレスを愛してやまなかった選手だと思う。外見は重厚で豪傑、という感じだが多分に繊細でナイーブなココロの持ち主だったと思う。「気が優しく力持ち」、ソレを地で行くような人と、TVから雑誌から見受けた。師であるアントニオ猪木氏に「もう少し体重を落とせば」と以前たしか言われていた。もう少し体重が少なければ、レスラーの頂点、ヒーローとして君臨できたカモしれない、というコトだ。本人もそのコトを気にし、ダイエットに取り組んだりもしたらしいが、うまくいかなかった。だけどもその体格のおかげで、トニーホーム戦やスコットノートンなどのパワーファイターとの熱闘、そして今は盟友となった小川直也選手との死闘、という数々の名勝負が産まれたのだった。
橋本真也というプロレスラーは、ご本人には失礼カモしれないが非常に「負け」が似合うレスラー、というイメージがある。今もあの負けがこんでスランプ状態に陥っていた時の、あの髭づらの顔が浮かぶ。そして小川直也との戦いで見せた悔しさあふれんばかりの顔。何度も何度も自分に奮起を促すが、小川の幾度となく繰り出されるSTOに打ち砕かれる。あの顔に「がんばれ!」と声援を送らずにはいられない。
小川選手との戦いについてはいろんなトコロで語られているので、興味のある方はそちらを参考にしてもらいたいと思うが、あの試合はガチンコだったらしい。ただその小川のガチンコさを受けとめる橋本選手の器量、という部分が浮かび上がってくる。ソコに小川は心動かされ、そして橋本選手も小川の実力を認め、「確執」と言われた関係から「無二の存在」にまで至る。ココがプロレスの良いところである。プロレスは結果ではない。
簡単に付け加えるが、今全盛のK−1、PRIDEなどの格闘技は「勝つための」「関節を決める」ためのテクニック、という勝敗が重要視されるのに対し、プロレスはハッキリいって勝敗は「おまけ」に過ぎない。ただソコに行きつくためのプロセスが重要視される。技のかけ合い、心理的な駆け引き、技を受けるなどのテクニック・ムーブメントをいかに観客またはTVを観てる人に見せるか、が重要になる。ソコを楽しむモノなのである。よってプロレスラーが格闘技に参戦するのはお門違いといって言いし、逆に格闘技の選手がプロレスをしても「ショッパイ」で終わる可能性が多いワケである。
話はソレたが、そんなワケでプロレスというのは、間のドラマが重要になる。だから長く観続ければ観続けた分、そのドラマが蓄積され面白くなっていく。橋本選手、格闘技全盛のこの時代に、三銃士興行をやって欲しかったなぁ。ソレだけが残念ですが、ご冥福をお祈り致します。