『ぼくのおばあちゃん』のつづきのつづき。
榊監督というのはどうも基本「笑い」を入れないとダメなようだ(笑)。性格的に「陽」の人なんでしょう。でもこの作品ではソレが良い方向に表れてると思う。人の生き死にとか親の面倒を見る問題とか、あまり明るくないシビアな題材だけど、その「陰」が監督の「陽」で中和されてる、というか救われるなぁーという感じに仕上がってる。ややファンタジー仕立てというコトもあって、そんなに重くは無い。
時系列をシャッフルしてあったりするのだけど、ソレも必要だからやってるんだろうな、という範囲でちゃんと効果が感じられる。意味の無いシャッフルではないというコトだ。でもちょっと「この場面いらないカモ、、」という説明的な場面がいくつか見うけられた。このへんさじ加減てムズかしいのカモしれない。ワタクシは観る人が「なんとなくこういうコトを言ってるんだろうなー」という想像にある程度まかせていい派。まかせてくれ派。「足し算」の映画じゃなくて、「引き算」の映画を監督には是非やってほしいと思うのだ。監督ならできると思うんだけどどうでしょう。
いずみさんの音楽は前作よりだいぶ良くなってた。前作『GROW』は笑える作品なので、いずみさんの音楽は場面とあんまりこう、浮いてたというかしっくり馴染んでなかったというのが正直なトコロ。でも今作は題材的に陽の場面笑える場面はともかく、ちょっと陰の場面とか優しい場面とかの音楽はすごくイイ感じだった。とくに『バースディキャンドル』(もちろん歌は無し)のリコーダーバージョンとかアコギバージョンとその各場面は、他の場面での音楽より1レベル上ぐらいに、とてもしっくり馴染んで「おおーっ」ときた。なかなか良かった。やっぱりいずみさんの音楽はこういうのが向いてるんだろうか?たぶんいわゆる映画の音楽と歌のような音楽で差がでてしまってるんじゃないのかな?全ての場面での音楽が同じレベルになればいいのかね。
『Wonderful Life』も題材の重さを軽やかにしてくれるので、エンドロールで流れてくれると「救われたぁー」という気分になる。
大変失礼なコトを書きましたが、正直な感想を書いてみました。
あと、この作品が遺作になった深浦加奈子さんのコトに少し触れなければならない。ワタクシは正直言ってこの女優さんのコトを知らなかったのだけど、今回観て非常に寺島進さんとの夫婦(「めおと」て感じ)のかけあいがすごく良かった。たぶん男ならあんな奥さんがいい!て人、いっぱいいるだろうなという。明るくてあっけらかんとしてて、何があっても笑い飛ばすような。ソレでいて気が回るようなね。夫は子供みたいにはっちゃけてるけど実は奥さんの手のひらで遊んでるだけで、手のひらで遊ばせてくれるような包容力のあるおっかさん。
観てるうちに「たぶんショムニに出てたのかな?」とか思い出したけど。たしかに惜しい人が他界してしまったと思う。榊監督も自分の次作次々作と、機会があれば出演してもらいたかったに違いないだろう。でも最後まで役者として現場で演技をしたというのは、役者冥利に尽きるのカモしれないね。そういう点では幸せだったんじゃないだろうか。深浦さんも人生生ききった、というコトだからね。
この映画は1人で観てもいいけど、家族で観るとまたいいんだろうなと思った。ソレでいろいろ話し合ったらいいと思う。観た後に、ゴミゴミした新宿を歩いてる人達の顔を優しい目で見れる。古き良き時代の人情とか家族愛を思い出させる、そんな作品です。
訂正:上映は20日までではなく、時間変更が21日からあるらしくどうもソレを勘違いしたようです。失礼しました。来月半ばまで映画は上映しています。