なぜ北斗はノーザンライト・ボムの伝授をしないのか。
まずは記事を読んでもらいたい。最近の試合でスターダムのジュリア選手がかつての北斗晶選手のフィニッシャーであるノーザンライト・ボムを、北斗嬢の許可なしに使用している。ジュリア選手の3・3日本武道館での自らの試合を解説した北斗嬢が、ジュリア選手のコトを「デンジャラス・クイーン」とかつて北斗嬢が呼ばれた異名を叫んだ、そのコトを理由にジュリア選手が北斗嬢に「認められた」と解釈し、伝説級の技を拝借している。ちなみに北斗嬢自身は自らを「デンジャラス・クイーン」と称したコトはなく、まわりが(とくに週プロ)が勝手に言ってただけである。そしてまぁあくまで北斗嬢のリップサービスであるし、ジュリア選手もソレは承知のコトで、ソコは気づかないフリしてあえて使ってる気がしないでもない。
しかし、この技は長与千種選手に許可、あと北斗嬢の旦那さんでもある健介氏が現役時に使用してたくらいで、基本的には伝授される技ではない。それはなぜか?なぜ北斗は自身のフィニッシャーであったノーザンライト・ボムの他の選手に伝承をしないのか?
結論から言えば「危ない技だから」だとワタクシは思う。ではなぜ長与選手には許可したかというと、もちろん現役当時の北斗選手の先輩であり、長与選手ほどのベテラン選手の技量があればこそであったと思うし、そのへんは健介氏に対しても同様の理由だと思う。まぁ身内だしね。身内だから、技をかけられた選手に万が一何かあった際にも連帯的に責任は取れる。そのくらいの覚悟を健介氏と共有できる・するつもりであったから、使用にGOを出した、そういうコトだとワタクシは考えている。
覚悟・責任の共有。技の開発者に技の許可を得るというコトはそういう意味もあるとワタクシは考える。今回の記事に限らずではあるけど、勝手に他人の技を使用するというコトは、そしてその技が名のある人の技であるほど、万が一その技をかけられた選手に不慮の事故や何かあった場合に、その技の開発者にも責任が及んでしまう可能性がありえる。ソコをちゃんと考えてるのか。考えて使用してるのか?記事の内容を読むだけでは、その点については読み取れない。単に人気に便乗して、他人のネームバリューを利用してるだけに過ぎないのでは?何も起きないうちはいいけど「過去をリスペクト」だけでは済まされない問題も含まれてるワケだ。
このノーザンライト・ボムという技は、現役だった北斗選手がボディスラムを失敗して、偶然出来た技だと何かの雑誌か文面で読んだ記憶がある。ようは「できそこないの技」なワケだ。というコトは技を受ける選手のコトはあまり考えられていない技だとも言える。
たとえばパイルドライバー(ツームストーンでもドリルアホールでも)は実際は脳天を直撃させていない。技をかける選手の太ももにかけられてる選手の頭部が隠れてるので、頭に食らわせてるように「見える」だけである。しかしノーザンライト・ボムの場合、頭を隠せる太ももがない。腕で頭を抱えるだけなので、かける選手が自ら倒れこむようにしてかける。そしてかけられる選手は受け身を取る(ほとんど取れないだろうけど笑)。倒れこむようにかけないと、かけられる選手の頭部が脳天からマットに突き刺さってしまうからだ(かつて北斗自身も重量級のアジャ選手には体重を支えきれず、脳天をマットにめり込ませている。ソレでもアジャ選手はケロリとしてるから大したモノなんだけど笑)。かといって脳天めり込みを避けるために、あまり倒れこんでしまうと「できそこないのパワースラム」みたいになってしまう。相手の技量や体型によって変わってくるから、倒れ具合の調節がムズかしいのではないかとワタクシは考える。
ただ動画を見る限り、ジュリア選手はなかなかオリジナルに近い形ではある。相手を抱え込んでタメもあるし、リズム的にも良い。相手が肩で受け身取れるような形で倒れこんでるし。この倒れこみのタイミングていうのもムズかしい。あまりに早くてもダメだし、遅くても間に合わず脳天直撃。だからシンプルなようでいてケッコームズかしい技だとワタクシは思っている。
ただまぁソレも大きな理由の1つではあるけど、やはりただ人気や伝説級の技に便乗して拝借、というのがどうなのかというのがある。
このノーザンライト・ボムという技は、かつて現役だった北斗選手がコーナーから雪崩式ツームストンパイルドライバーを食らって首の骨を折ったというトコロから始まっている。ソコから復帰は絶望的で引退しかないという状況から奇跡的にカムバックを果たし再びリングに立った、そういう彼女のストーリーでありバックボーンがあるからこそ、相手の首を折らんばかりのこの技の凄みというか活きてくるのである。こういった自身の過去の経験も含めて「この技」とも言える。違う技だけど自分が首の骨を折られたから、今度は相手の首の骨を折ってやる。そういうレスラーとしての覚悟であり意味合いも想像できるから、この技は戦慄的なのである。なので、簡単だからという理由だけで見よう見まねで安易に使用するだけでは、全くのニセモノなワケだ。
よってこの理由からすれば、北斗晶選手自身しかこの技はできない。たとえ北斗嬢自身が許可して伝授したとしても、完全ではない。彼女自身の歴史がこの技に乗っかっているからだ。コレがタイトルの「なぜ北斗はノーザンライト・ボムを伝授しないのか」のワタクシなりの考えである。いくら技の形や完成度が高くても、ソレはイミテーションであり、別物である。だからジュリア選手のその技は、ワタクシとしては賛否の「否」というよりは、全くのベツモノ、似たような技、という見方でしかない。
あと付け加えるならば、北斗晶という選手は頭が良く、気遣いの人である。ワタクシのようなかつての北斗ファンの、幻想も含めた「北斗晶」というプロレスラーのイメージを壊さないように北斗自身が配慮をしてる、気を使っている、とワタクシは考える。そしてファンからすれば、そういった北斗の気持ちがジュリア選手によって踏みにじられてるような気すらするのが、正直なトコロである。
ジュリア選手と同じユニット、ドンナ・デル・モンドの舞華選手でさえ、師匠にあたるTAKAみちのく選手の技であるみちのくドライバーⅡの教えを請うて使っている。TAKAみちのく選手いわく「舞華選手はもう他団体の選手になってしまったけど、いずれトップになる選手だから」という理由で自らのフェイバリットホールドをかつての弟子に教えた。同門の後輩でさえ、しっかり筋を通している。問題を巻き起こしたり賛否もいいが、筋を通すべきトコロは筋を通すというのは、業界で活躍する意味においても大事なコトだと思う。
よっぽど北斗自身が信用できる選手にしか伝授がされていない、という事実。ある意味答えは出ているのである。そのコトをジュリア選手はもう一度よく考えてみるべきである。そのへんをジュリア選手はどう考えているのか、問うてみたい次第だ。
よかったら補足として書いたのでコレも読んでね。