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獣神サンダー・ライガー引退とプロレスにおける「楽しさ」。

battle-news.com

獣神サンダー・ライガー選手(以下ライガー選手と略)は前日の1月5日に引退試合を終え、この日1月6日に引退セレモニーを迎えた。

ライガー選手が引退するという情報を得てから、すぐにライガー選手についてブログを書こうかと思ったが、他に優先すべきコトが重なり、ソレらが済んだときにはすでにタイミングを逸した形になったので、ならこの引退の日を待ってから、あらためて書こうと思い直した。どうせ書きたくなるのだから、そのタイミングのほうがいいだろうと。その間、ライガー選手のコトを考える時間にもなったので、ちょうどよかったとも言える。

ライガー選手を一言でいえば「BORDERLESS(ボーダーレス)」。まさにこの言葉通り「境」というモノをことごとく取っ払ったし、そもそもライガー選手本人に「境」というモノがなかったんだと思う。

ライガー選手は、デビューしてからしばらくはあまりパッとしなかった記憶がある。(初代)タイガーマスク=新日本ジュニアの象徴、というあまりに巨大な過去の伝説、人々の記憶のタイガーマスクと戦わなければならない。観る側もタイガーマスクを引きづってるし、どうしたって比較してしまう。期待度も高いが、マスクマンは「キワモノ」である。色眼鏡で見られる。新日本でマスクマンとしてデビューする選手の宿命といってもいいくらいの重圧を、さすがのライガー選手も感じてたのでは?とワタクシは思ったのだけど、本人は意外とそうでもなかったようで、ライガーになる前から「俺は俺のやり方でやればいい」と考えてライガーになったようなのだ。ただライガーになってしばらくは本人が自分のファイトスタイルに試行錯誤してたようで、この期間がワタクシにはどうもパッとしてないように映ったのだった。

失礼になるカモしれないが、ライガー選手の「中の人」が楽天的で楽観主義者で、内向的ではなく、変なこだわりもない(ように見受けられる)性格によって、早くから「タイガー幻想」の呪縛から逃れるコトができてたようだ。。「タイガーマスクタイガーマスク、オレはオレ。お客さんを楽しませようとする前に、まずオレ自身がライガーを楽しまなきゃお客さんに伝わらない」と。大抵のマスクマンが、この初期段階の重圧にやられて失速してしまう中、ある意味ライガー選手が持ち前のこだわりのなさを発揮し、自分自身の「ボーダー」を越えていったトコロから、ライガー選手の今日に至るまでの活躍につながっていったとワタクシは思うのだ。

ライガー選手の功績といえば、SUPERJ-CUPを提唱し、当時ブームだったインディー団体の選手にも門戸を開き、ハヤブサ選手やサスケ選手など数々のインディーレスラーが脚光を浴びた。メジャーだろうがインディーだろうが、素晴らしい選手は素晴らしい、と。そして当時は斬新だったジュニア対ヘビーの試合、ライガー選手は当時の団体のエース、スーパーヘビーといってもいい橋本選手に挑んだ。正直橋本選手の余裕を崩せはしなかったが(ライガー選手に敬意を表しながらも、8割ていどの力で闘ってた印象)、ジュニアとヘビーの垣根をとっぱらった。この試合がいい意味でも悪い意味でも今のヘビーの「小型化」につながってるカモしれない。

そしてライガー選手は日本以上に外国での人気がすごいらしい。たとえばアメリカに興行に行くと一番声援が多いのはライガー選手とのコト。コレはどの国に行ってもそのようなのだ。「ライガー選手にはかなわない」と選手らは口々に言うからダントツなのだろう。マスクマンは感情が読み取りづらい、重圧に押しつぶされるなどのマイナス面がある一方、利点もある。マスクマンというのはとっつきやすい。ビギナーにとっては「入門編」としてのマスクマンになる。子供にもわかりやすい。しかしライガー選手はマスク越しでも何故だか感情が読み取れる。とくにライガー選手は「角」で認識されやすい。ワタクシは当時「あの角は反則じゃないのか?」と思ったが笑。外国の数々の団体からオファーが一番多いのもライガー選手らしい。ライガー選手は世界の「境」も越えて行ったレスラーと言える。新日本の、ジャパニーズスタイルのプロレスを世界に広めた立役者の一人と言えよう。

そしてコレはあまり言われないが、新日本が低迷してた頃、棚橋選手以外にもライガー選手が下支えしていたから、今の新日本の隆盛があるのだとワタクシは思う。あの頃の棚橋選手には、先輩選手たちが自分を支えてくれているという安心感があったのではないだろうか。だから棚橋選手は先頭に立ち、団体を牽引できたとも言える。

あとライガー選手は技の開発者でもあった。船木選手とともに習ったという骨法から持ち込んだ掌底(掌打)、浴びせ蹴り、ライガーボム、雪崩式フランケンシュタイナー、フィッシャーマンバスター、シューティングスター・プレス、スターダスト・プレス。今でも使い手が存在する技が多いのが特徴で、ハイフライヤーは必ずといっていいほどシューティングスター・プレスをやる。コレらすべての技はライガーが初だ。身体の小ささからかサブミッションは無い。身体そのものを相手にぶつけるか、「この身体の小ささで持ち上げるのか?」といった意外性を狙ったボム・バスター系か雪崩式フランケンシュタイナーのような相手の身体の大きさを逆利用した技だ。フランケンシュタイナー自体はスコット・スタイナー選手が考案した。たまにこのフランケンシュタイナーやラナ系を、それほど背の低くない選手がやって、頭を打ちそうになってる場面を見るのだが、見ててヒヤヒヤするのでやめてほしい笑。この技は背の高いレスラーに対して背の低い選手がかけるから頭を打たないで済むのである。

引退会見で、ライガー選手が印象に残ってる相手はグレートムタ、橋本真也鈴木みのるとのコト。おそらくライガー選手は武藤選手や橋本選手とはウマが合ったんだろう。武藤選手は陽のタイプだし、橋本選手は古きよき昭和のレスラーの雰囲気を残した豪快で細かいコトにこだわらないタイプ。鈴木みのる選手は闘ってて楽しい選手だったのではないだろうか。

鈴木みのる選手にはライガー選手と闘ってプロレスの面白さに気づいたという有名な話があるが、かたやライガー選手にも、まだ当時は団体同士のメンツというか責任を負わされるというようなプレッシャーがあっただろうと思う。「新日本が逃げたと思われたくない」との思いから対戦相手として名乗りあげたらしいのだけど、どうやら団体間の内部の事情をライガー選手が知り、「とにかくコトを丸くおさめるしかない」と考えたのが真相らしい。ソレでも「またみのると闘える」というようなシンプルでピュアなワクワク感もライガー選手にはあったのカモしれない。あの試合でライガー選手の、リスクしかない試合に応えてくれた器の広さ、人間的な大きさを感じ、終焉を迎えようとしてた鈴木選手が解放された、といってもいいのカモしれない。あの試合から鈴木選手は「プロレスて何だろう?」と興味を持ち出したのではないだろうか。自分たちのやってたプロレスはなんて視野が狭かったのだろうかと。だから今となっては相手が健介選手じゃなくてよかったのカモしれないとも言えるのだ。もしあの時健介選手が相手だったら、ソレで鈴木選手は満足して終わってたカモしれない。相手がライガー選手だったから、今の鈴木みのる選手がいるのカモしれない。結局ライガー選手は鈴木選手にプロレスの面白さを気づかせ、思い出させ、魅了したのだった。一方、ライガー選手もこの試合での敗戦の悔しさもあってか、「総合は嫌い」と発言しつづけてたにもかかわらず、面白さに気づき、柔術を習い始めたとのコト。近年は「ライフワークにしたい」とまで発言してる。ライガー選手もライガー選手で面白さに目覚めた。

コレはこじつけカモしれないが、ライガー選手の入場曲『怒りの獣神』は曲以外にも歌が流れるのだけど、鈴木選手の『風になれ』も中村あゆみ嬢の歌が流れる。おそらくライガー選手はタイガーマスクからの伝統というか漫画から生まれたキャラクター だから主題歌的に入場曲で歌が流れ、というのを引き継いでいると見受けられるが、デビュー当時は「ダサい、、」と思ったはずだ。でもコレすら長く続ければ唯一無二、一周回ってカッコ良くすら感じる。だって他の選手は歌が無いのだから。ソレだけでも目立てる。鈴木選手の場合はシンプルで、鈴木選手自身が中村あゆみ嬢のファンで中村嬢に歌って欲しいとオファーをかけたら快諾してくれたという。曲以外に歌も流れるのはドラゲーの望月選手や全日本に出ている佐藤光留選手など他にもいるが、ソレゾレ理由はちがうのだろうけど、2人に何か共通するモノを感じてしまうのはワタクシだけではないだろう。何しろみんなで歌えるというのが良い。ライガー選手の引退式で、棚橋選手が音頭を取って選手全員で『怒りの獣神』を歌ったらしい。非常にいいなと思った。

「自分が楽しいから続けてきただけ」というようなコトをライガー選手は会見でコメントしている。くしくも復帰した高橋ヒロム選手も「プロレスは痛い。でもソレ以上に楽しい」と同じようなコメントをしている。首の骨を折っても、戻ってきたいと思わせる楽しさ。

ソレはゲラゲラ笑うような可笑しさではなく、たとえばスリルを味わうようなゾクゾクした楽しさだろう。「命の奪い合い」(タマのとり合い)とまでは言わないまでも、相手との駆け引き、大勢の観客に声援を送られ花道を歩いたり、リングの上でスポットライトを一身に浴び、自分の一挙手一投足に注目され、自分の1つ1つの動きに観客が一喜一憂する、ソレら1つ1つが楽しい。

バンジージャンプをする人の気持ちも似たような感じなのではないだろうか。人生においてやる必然性は全く無い。スリルがあるけど自分が際(きわ)まで追い込まれて、ソレを越えていく。解放感に至る。アドレナリンが噴出する。エベレストに登る人の気持ちも同様ではないだろうか。登る必然性は全く無いが、自分の限界に挑む。自分はどこまで辿り着けるのか。際まで追い込み、限界を超えていく。そういった「キワ」まで行かないと感じるコトができない、見えない景色がある。そういった日常ではなかなか感じるコトのできない「楽しさ」ではないだろうか。イカレてるが、だからこそピュアな欲望。ソコに輝きがある。

「こんな試合してたら、いつか死ぬぞ」というのはいつの時代にも言われてきている決まり文句だ。死の谷に張ってある「楽しさ」という名の1本のタイトロープを渡る。ソレがレスラーにとって「生きている」という実感。もはや誰も止めるコトもできず、自ら歩くのを止めなければ、観客は応援するしかないのだ。ソレが唯一彼らの力になるのだから。

ヒロム選手に言いたいのは、ライガー選手を目標にしてはいけない。目標にしたら一生ライガー選手を追い越すコトはできない。かえって自分の可能性をせばめてしまう。かつてライガー選手も「(初代)タイガーマスクタイガーマスク、オレはオレ」と早くから区別し、自由に自分のスタイルを試行錯誤したから、タイガーマスクに勝るとも劣らない偉業の数々を残し、その後の獣神サンダー・ライガー像を確立した。彼は彼でスペシャル。ヒロム選手はヒロム選手のやり方で、キャンバスを自由に動き回りながら、スペシャルになればいい。